出会いアプリは男女の出会いの場ではなく、コミュニケーションを楽しむためのアプリという建前で運営されていることから、現状では「出会い系サイト規制法」の対象とはなっていないために児童被害が増加していることから、年齢確認手続きの厳格化が強く求められています。
「出会い系サイト規制法」の趣旨と目的
「出会い系サイト規制法」は正式には「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」といい、18歳未満の少年少女(=児童、以下「児童」と表記)を児童買春や児童ポルノなどの性犯罪から保護することを目的に制定、施行された法律です。
警察庁による「出会い系サイト規制法」の解説によると、「インターネット異性紹介事業」とは、
- 面識のない異性との交際を希望する者(異性交際希望者といいます。)の求めに応じて、その者の異性交際に関する情報をインターネット上の電子掲示板に掲載するサービスを提供していること。
- 異性交際希望者の異性交際に関する情報を公衆が閲覧できるサービスであること。
- インターネット上の電子掲示板に掲載された情報を閲覧した異性交際希望者が、その情報を掲載した異性交際希望者と電子メール等を利用して相互に連絡することができるようにするサービスであること。
- 有償、無償を問わず、これらのサービスを反復継続して提供していること。
この4項目すべてに該当する事業と定義されています。当然ながら出会い系サイトは、見知らぬ男女が出会うための掲示板やプロフィールを掲載しているので「インターネット異性紹介事業」に該当します。
そして、「インターネット異性紹介事業」に該当するサービスの運営業者には、利用者が児童でないことの確認を次のいずれかの方法で行うことが義務付けられています。
- 運転免許証その他の当該異性交際希望者の年齢又は生年月日を証する書面の当該異性交際希望者の年齢又は生年月日、当該書面の名称及び当該書面を発行し又は発給した者の名称に係る部分の提示、当該部分の写しの送付又は当該部分に係る画像の送信を受ける方法
- クレジットカードを使用する方法その他の児童が通常利用できない方法により料金を支払う旨の同意を受ける方法
つまり、この規制法の趣旨と最大の目的は、利用者が18歳未満でないことを自己申告ではなく公的に証明できる方法を確認することを義務付けることで「インターネット異性紹介事業」のサービスを児童が利用できないようにし、児童が児童買春などの犯罪に巻き込まれることを防ぐことにあるということです。
現状では、出会いアプリは規制法の対象外
「出会い系サイト規制法」の内容に照らし合わせると、出会いアプリも「異性紹介事業」に該当するように思えますが、現状では、出会いアプリは「異性紹介事業」にはあたらないという解釈がなされており、法律の規制対象とはなっていません。「出会い系サイト規制法」の第5条では、事業者が異性交際希望者に対し、
- 異性交際希望者が特定情報(「異性交際希望者と他の異性交際希望者が出会うために指定する日時及び場所に係る情報」並びに「住所、電話番号、電子メールアドレスその他の連絡先に係る情報」をいう。以下同じ。)を書き込めるようにする役務
- 異性交際希望者が他の異性交際希望者に係る特定情報を閲覧できるようにする役務
- 異性交際希望者が電子メールその他の電気通信を利用して他の異性交際希望者に特定情報を伝達することができるようにする役務
のいずれについても提供しない場合は、
- 異性交際希望者に対し、インターネットを利用してその年齢又は生年月日を送信するよう求め、当該年齢又は生年月日により当該異性交際希望者が児童でないことを確認する方法
- 異性交際希望者に対し、インターネットを利用して児童でないかどうかを問い合わせ、その回答により当該異性交際希望者が児童でないことを確認する方法
で足りるとされています。つまり、男女問わず利用者が異性と出会うために必要となる情報(待ち合わせ場所や日時、メールアドレスなどの連絡先情報)の書き込みや閲覧、送信ができるサービスを提供していなければ、年齢確認のやり方は、18歳以上であることを公的に証明できる厳密な方法ではなく、自己申告による年齢認証だけで構わないということになっているのです。
ぎゃるるをはじめとした無料出会いアプリの多くは、利用規約で異性との出会いを目的とした利用を名目上禁止しています。あくまでアプリ上でのチャットやメールによるコミュニケーションを目的としたものであるとの体裁で運営されているので、「異性紹介事業」には当たらず、利用者の年齢認証は簡単な方法で確認すればいいという解釈がなされていると考えられます。
規制法の対象外となっていることで児童被害が増加
ところが、実際にはほとんどの出会いアプリでは、伏せ字などを使うことにより、待ち合わせ場所やメールアドレス、LINEやカカオのIDなどの連絡先をチャットやメールでやり取りすることができてしまいます。そのことにより、出会いチャットアプリが援助交際、児童被害の温床になってしまっているのです。
これらの統計データが示している通り、出会いアプリを含むコミュニティサイトにおいて児童が被害に遭うケースが増加している最大の要因は、利用者の年齢を公的に証明できる方法ではなく、自己申告などの簡単なやり方で確認すればいいということになっているため、18未満の児童でも異性との出会い目的で使えてしまうことにあります。
出会いアプリも法律の規制対象にするべきか?
出会いアプリの多くは、利用規約で連絡先の交換などをはじめとしたメッセージのやり取りを禁止し、利用者がやり取りするメッセージ内容を機械的にチェックする仕組みを導入していますが、それ掻い潜るやり方で異性間の出会いにつながるやり取りができてしまう以上、あくまでコミュニケーションアプリに過ぎないという建前は、有名無実化していると言わざるを得ません。
「出会い系サイト規制法」の本来の趣旨・目的である“児童を性犯罪から保護すること”に反し、援助交際などの被害に遭う児童が増加している以上、出会いアプリも「異性紹介事業」として法律の規制対象とし、利用者の年齢確認を公的書類やクレジットカード決済などにより行う必要性があることは明らかです。少なくとも、Google Play Store や App Store 上で配信されている異性間の出会いを想起させるチャットアプリや出会いアプリに関しては法律の規制対象とし、年齢確認の厳格化を義務付けることが早急に求められると言えるでしょう。
年齢確認をしっかり行っている優良出会い系アプリを使うのが安全
出会いアプリが法律の抜け目をついたグレーな状態で運営されていることや、事実そのことにより児童被害が増加していることからすると、出会いアプリを異性との出会い目的で使うのは決しておすすめできません。児童を被害に合わせることにつながる可能性があるだけでなく、自分が加害者にもなり得るからです。
出会いアプリを通じて出会った相手が18歳未満の児童だった場合は、たとえ相手が18歳未満の児童であったことを知らなかったとしても「児童誘因行為」に当たるとして摘発される可能性が高いので、出会いアプリを使うことには、児童だけでなく18歳以上の利用者にも大きくなリスクを伴います。
自分が犯罪を犯す側になりかねないリスクを考えれば、出会いアプリを使うことにはデメリットこそあれメリットはないに等しいと言えるでしょう。
それに対して、「異性紹介事業」としての届出を行い、利用者の年齢が18歳以上であることを公的に証明できる方法で確認している優良出会い系公式のアプリは、児童を犯罪に巻き込む危険性もありませんし、自分が加害者になる危険性もないのではるかに安全です。その観点からも出会い系アプリを使う場合は、ワクワク や ハッピーメール などの優良出会い系公式のアプリが推奨されます。
関連リンク
- インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律施行規則
(平成二十年国家公安委員会規則第二十一号)
http://www.npa.go.jp/cyber/deai/law/images/kisoku.pdf - 「インターネット異性紹介事業」の定義に関するガイドライン
http://www.npa.go.jp/cyber/deai/business/images/01.pdf - 「出会い系アプリ」が「出会い系サイト規制法」で規制されない理由
https://news.yahoo.co.jp/byline/okumuratoru/20140128-00032069/